有機合成研究室

教職員

瀬尾利弘教授、徳永雄次助教授、橋本憙徳助手、下村与治技官

研究内容紹介

1.ホスト分子(複合体)の創製とその機能解析


分子計算実験の様子

 大環状並びに籠状化合物(トリアジノファン、シクロデキストリン誘導体等)をホストとして合成し、その構造解析と種々のイオンや有機分子(ゲスト)に対する分子認識機能について解明しています。これら合成ホスト分子(複合体)は、近年注目を集めている機能材料のための機能発現のための基本成分となり得、21世紀の新しい機能材料に応用されることになるでしょう。また学生たちは、これらの研究を通じ基本的な合成技術を身に付けるとともに、分子モデルを用いた三次元的な分子挙動にも精通しています。


大環状化合物の最安定コンフォメーションの計算結果

<研究テーマ>

  1. 分子情報としての分子認識の研究
  2. ねじれ異性体と不斉認識
  3. トリアジノファンの合成とその特性解析
  4. 染料系大環状化合物の創製と特性研究

<参考論文、学会発表>

  1. Y. Tokunaga, D. M. Rudkevich and J. Rebek, Jr., "Solvation and the Synthesis of Self-Assembled Capsules", Angew. Chem., Int. Ed. Engl., 36, 2656-2659 (1997)
  2. Y. Tokunaga and J. Rebek, Jr., "Chiral Capsules. 1. Softballs with Asymmetric Surfaces Bind Camphor Derivatives", J. Am. Chem. Soc., 120, 66-69 (1998)
  3. Y. Tokunaga, D. M. Rudkevich, J. Santamaria, G. Hilmersson, and J. Rebek, Jr., "Solvent Contrrols Synthesis and Properties of Supramolecular Structures", Chem. Eur. J., 4, 1449-1457 (1998)

2.バイオファインケミカルズ

 キトサンは、2-アミノ-2-デオキシ-D-グルコピラノースが、β1-4結合した繰り返し単位からなる天然多糖類で、キチンの脱アセチル化によりたやすく得られます。生分解性、生体適合性、多官能性を持つ本天然高分子は、その化学修飾より様々な機能探求が期待でき、多岐に渡る分野での利用も検討、実施されています。
 当研究室では、キトサンの3個の異なる官能基にアシル基を導入して各種アシル化キトサンを合成し、アシル基の種類や置換度の違いによる合成物の構造や性質の変化を検討しています。また、合成したキトサン誘導体の低分子との相互作用に関する基本的知見を得るために、水中及び塩添加系での各種染料に対する吸着挙動についての研究も試行しています。このように環境にやさしい天然アミノ多糖類(キチン・キトサン等)を素材に、種々の官能基を導入し、合成物の構造や特性を生かした環境を汚染しない材料の開発を目指しています。本研究を通じ科学者の立場から、現在人類が直面している環境問題に関して身をもって体験し、今後の社会に大きく貢献することと思います。

<研究テーマ>

  1. 新規キトサン誘導体の合成研究
  2. キトサン誘導体の物性評価及び特性解析
  3. キトサン誘導体の材料素材への応用検討

<参考論文、学会発表>

  1. T. Seo, I. Iijima, "Sorption Behavior of Chemically Modified Chitosan Gel", Biotech. Polm., 215-227 (1991)
  2. T. Seo, H. Ohtake, T. Unishi, I. Iijima "Permeation of Solutes Through Chemically Modified Chitosan Membranes", J. Appl. Polym. Sci., 58, 633-644 (1995)
  3. 瀬尾利弘, 下村与治, 卯西昭信, "ビグアニド基を有するキトサン誘導体の合成と性質", 高分子論文集, 53, 70-76 (1996)
  4. 瀬尾利弘, "キチン・キトサンの性質を調べる", 化学と教育, 43, 236-237 (1995)
  5. 瀬尾利弘, 池田貴恭, 虎田賢治, 中田泰仁, 下村与治, "各種アシル化キトサン誘導体の合成と性質", キチン・キトサン研究会 第13回シンポジウム特集, 5, 194-195 (1999)
  6. 瀬尾利弘, 池田貴恭, 虎田賢治, 中田泰仁, 下村与治, "各種アシル化キトサン誘導体の合成と性質", 日本化学会第76春季年会, (1999)

3.両親媒性分子集合体の合成とその特性解析

 静電或いは疎水的相互作用は、酵素反応における基質認識の主だった要因の一つであり、その酵素モデルとしてミセルや高分子電解質が用いられ、低分子との相互作用や触媒作用などについて種々研究されています。
 当研究室では、N-ビニルホルムアミドより合成したポリビニルアミン(PVAm)の側鎖に疎水基を導入して、これら高分子の性質(溶解性、水溶液中における粘度や表面張力)を解析し、またUV、蛍光スペクトルを用いて低分子プローブとの相互作用についての研究を行っています。これら合成高分子は、界面活性剤・吸着剤・酵素類似機能触媒としての利用が期待でき、学生たちは研究を行いながら素材開発の基礎を学んでいます。また研究を通じ、化学の基礎知識や分析機器の使い方や利用価値を身に付けています。

<研究テーマ>
  1. アルキル側鎖を持つポリビニルアミンの合成と高分子特性解析
  2. アシルポリビニルアミンの合成と素材研究への展開

<参考論文、学会発表>

  1. T. Seo, T. Kajiwara, K. Miwa, T. Iijima, "Catalitic Hydrolysis of Phenylesters in Cyclodextrin/Poly(allylamine)systems", Makromol. Chem., 192, 2359-2369 (1991)
  2. T. Seo, T. Unishi, K. Miwa, T. Iijima, "Self-Organization of Poly(allylamine)s Containing Hydrophobic Groups and Its Effect on the Interaaction with Small Molecules 1. Static Fluorometry", Macromolecules, 24, 4255-4263 (1991)
  3. T. Seo, T. Unishi, K. Miwa, T. Iijima, "Ester Hydrolysis by Poly(allylamine)s Having Hydrophobic Groups: Catalitic Activity and Substrate Spacificity", J. Macromol. Sci., A33, 1025-1047 (1996)
  4. 髪口啓輔, 下村与治, 瀬尾利弘,"アルキル含有ポリアミンの合成と性質" 日本化学会第76春季年会講演要旨集I, IPB 153 (1995)

有機合成研究室のホームページへ(工事中です)