高分子加工学研究室
教職員
家元良幸教授、田上秀一講師
研究内容紹介
1.マルチフィラメント糸のインターレース加工に関する研究

インターレース加工の実験の様子
マルチフィラメント糸のインターレース加工は、インターレーサと呼ばれる空気噴射装置内に糸を約200m/minで高速走行させ、音速領域の高速空気流を吹き付けることにより、糸に集束性を付与する加工法です。そこで作られるインターレース糸は電子基板の製造に用いるガラス繊維や衣料・産業資材に用いられる化学繊維に使われます。この加工法で作られるインターレース糸は、右図に示すように、糸は互いに絡まっている交絡部と糸がばらばらの状態になっている開繊部が周期的に存在する構造をしていますが、その生成過程や構造などはわからない点が多くあり、その基礎研究に関する企業の要求度はたいへん大きいです。加えて、福井県は繊維産業が主たる工業産業となっているので、この研究の成果は地域の発展に大きく寄与できると考えられます。
本研究室では、インターレース加工やインターレース糸に関する基礎研究を行っています。最近では、インターレーサ内の空気流に関するコンピュータシミュレーションやハイスピードカメラで撮影したインターレース糸の運動を画像処理により解析する研究にも取り組んでいます。インターレース加工に関する研究をとりあげている研究室は世界的に見ても例がなく、当研究室からは繊維関係の企業で活躍している優秀な修了生や卒業生を輩出しています。

インターレース糸の拡大写真
<研究テーマ>
- インターレース加工のモデル実験
- 画像処理を用いたインターレース加工における糸の挙動解析
- インターレース糸の混繊度の測定および評価に関する研究
- インターレーサ内高速空気流の数値シミュレーション
- インターレース糸の構造のモデル化
<参考論文、学会発表>
- Y. Iemoto, S. Chono and M. Ge, "On-Line Evaluation of Interlaces Yarn", J. Textile Machinery Society Japan, 45, 79 (1999)
- Y. Iemoto, S. Chono, K. Kasamatsu and W. Lou, "Size Effect of an Interlacer Part 1: Number of Tangles and Yarn Motion", J. Textile Machinery Society Japan, 45, 71 (1999)
- Y. Iemoto, S. Chono and T. Tanaka, "Study on Interlaced Yarn Part.6 : Yarn Motion in Interlacer", 45, 36 (1999)
- Y. Iemoto, S. Chono and T. Terachi, "Study on Interlaced Yarn Part.5 : Yarn Structure", J. Textile Machinery Society Japan, 45, 36 (1999)
- S. Chono, Y. Iemoto and T. Terachi, "Model Experiment of Interlaced Yarn Part.5 : Continuous Blow Method", J. Textile Machinery Society Japan, 45, 51 (1999)
- S. Chono, Y. Iemoto and W. Han, "Model Experiment of Interlaced Yarn Part.4 : Characteristics of a New Interlacing Process without Conventional Interlacers", J. Textile Machinery Society Japan, 45, 19 (1999)
- S. Chono, Y. Iemoto and T. Terachi, "Model Experiment of Interlaced Yarn Part.3 : Development of a New Interlacing Process without Conventional Interlacers", J. Textile Machinery Society Japan, 45, 13 (1999)
2.非ニュートン流体の計算機シミュレーション
プラスチックを加熱溶融させた高分子流体は、粘性と弾性をあわせもつ粘弾性流体なので、水の流れでは見られない特徴的な流動現象を示します。成形加工装置を設計する際には、用いる流体の特性は十分考慮する必要があります。
本研究室では、水とは異なる特性を持つ各種非ニュートン流体の熱流動について、有限要素法を用いた計算機シミュレーションを中心とした研究を行っています。右の写真は本研究室の研究に用いている高性能コンピュータです。また、下の図面は計算結果の例です。これは、高分子流体の急縮小流れの流線を示しています。水や油といったニュートン流体では見られない大きなコーナー渦が表現できていることがわかります。現在では、非等温粘弾性流動、三次元ダイ内流動や伸長流動混合装置などの成形加工装置内流動、レオメータ内流動などの問題に着目し、計算機シミュレーションを用いた流動現象の検討、装置の改良や改善に関する指針の検討、などをテーマを中心に研究を行っています。
また、計算機シミュレーションの利点のひとつとして、実験では見ることのできないこことや実現できないことを計算機上で再現できることがあります。本研究室では、そのうちのひとつとしてコロイド粒子など微粒子が分散している溶液をターゲットにして、分子動力学法やモンテカルロ法を用いて、例えば磁場をかけた場合やせん断流れをかけた場合の粒子挙動について解析を行い、微粒子分散系溶液の構造と物性について統一的な見解を得ることを目標として研究を行っています。
また、先に述べたインターレース加工の研究とともに、当研究室では得られた研究成果を日本繊維機械学会、プラスチック成形加工学会、日本機械学会など数多くの学会で発表しており、特に修士の学生には最低1回は必ず学会で研究発表を行うよう指導しています。
<研究テーマ>
- 磁性流体の挙動や特性に関するシミュレーション研究
- 非等温粘弾性流動の数値シミュレーション
- 粘弾性流動解析による流動特性測定装置の検討および評価
- Extensional Flow Mixer内の粘弾性流動解析
- ダイ内の三次元粘弾性流動解析
<参考論文、学会発表>
- S. Tanoue and Y. Iemoto, "Effect of Die Gap Width on Annular Extrudates by the Annular Extrudate Swell Simulation in Steady-States", Polym. Eng. Sci., 39, 2172 (1999)
- 山井三亀夫, 田上秀一, 家元良幸, "分子動力学法によるコロイド溶液の挙動解析", 日本機械学会流体部門講演会講演論文集, 283 (1999)
- 蝶野成臣, 田上秀一, 家元良幸, "画像処理法による繊維含有流体の二次元流れにおける繊維配向の測定", 日本機械学会論文集B編, 64, 3213 (1998)
- S. Tanoue. T. Kajiwara, Y. Iemoto and K. Funatsu, "High Weissenberg Number Simulation of Annular Extrudate Swell Using the Differential Type Constitutive Equation", Polym. Eng. Sci., 38, 409 (1998)
- 田上秀一, 古閑二郎, 梶原稔尚, 家元良幸, 船津和守, "粘弾性流体の高ワイセンベルグ数問題および二重管ダイスウェルシミュレーション", 成形加工, 9, 817 (1997)
3.溶融紡糸装置を使った研究

溶融紡糸装置を使った実験の様子
当研究室には溶融紡糸装置があります。これは二軸押出機、冷却水槽、延伸装置、巻取装置からなり、実際の製造工場で使われているものよりもかなり小型の機械です。これを使って、プラスチックのリサイクル、生分解性ポリマーを用いた研究など、環境や地球にやさしい繊維材料の開発を目指すべく、現在準備中です。
<研究テーマ>
- リサイクルに関する研究
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