化学工学研究室

教職員

埜村 守 教授、飛田 英孝 助教授、鈴木 清 助手、藤田 和美 技官、佐藤 秀左エ門 技官

研究内容紹介

1.不均一系重合反応の機構解明と動力学モデルの構築

 乳化重合、マイクロエマルション重合、分散重合など、重合の進行とともに数ナノから数ミクロンの高分子ミクロスフェア(高分子微粒子)が生成する不均一ラジカル重合系の重合機構を解明し、重合速度、生成ポリマーの物性、生成する高分子微粒子の粒子径や濃度などが予測できる定量的なモデルの構築を目指しています。現在、特に力を入れている問題は、
  1. 油溶性開始剤により開始される乳化重合における、油相中で発生するラジカルの動力学的役割を明らかにすること
  2. 高分子乳化剤、反応性乳化剤など従来の低分子界面活性剤とは異なる乳化剤を用いた乳化重合反応の動力学挙動を明らかにすることにより、乳化剤の役割を理解し新規な乳化剤の開発指針を得ること(社会人ドクター)
  3. 塩化ビニリデン系の乳化共重合機構の解明と動力学モデルの構築(社会人ドクター)
  4. マイクロエマルション重合の重合機構の解明
などです。


<研究テーマ>

  1. 油溶性開始剤により開始される油滴分散系でのスチレンのラジカル重合挙動
  2. 高分子乳化剤を用いた乳化重合の動力学的研究
  3. メタクリロニトリルの乳化重合の動力学的研究
  4. スチレンのマイクロエマルション重合の動力学-乳化剤の種類の影響-
  5. 酢酸ビニルのマイクロエマルション重合に及ぼす開始剤の種類の影響
  6. メタクリル酸ステアリルの乳化重合に及ぼすβ-シクロデキストリンの添加の影響
  7. PVAを乳化安定剤とする酢酸ビニルの乳化重合機構に関する研究

<参考論文、学会発表>

  1. M.Nomura, T.Kamada, K.Suzuki and K.Fujita, "Effect of Water Solubility of Oil-Soluble Initiators on the Particle Formation in the Emulsion Polymerization of Styrene", Proceedings of the American Chemical Society Division of Polymeric Materials: Science and Engineering Vol.80, 306, 516-517 (1999.3)
  2. S.Kato and M.Nomura, "A Kinetic Investigation of Styrene Emulsion Polymerization with Surface Active Polyelectrolytes as the Emulsifier. II: Effects of Molecular Weight and Composition", Coll. Surf. A: Physicochem. Eng., 153, 127-131 (1999)
  3. M.Nomura, T.Kodani, J.Ojima, Y.Kihara and K.Fujita, "Kinetics and Mechanisms of Emulsion Polymerization of Vinylidene Chloride. I. Effects of Operating Variables on the Rate of Polymerization and the Number of Polymer Particles Produced", J. Polym. Sci., Part A: Polym. Chem., 36, 1919-1928 (1998)
  4. M.Nomura and K.Suzuki, "A New Kinetic Interpretation of the Styrene Microemulsion Polymerization", Macromol. Chem. Phys., 198, 3025-3039 (1997)
  5. K.Suzuki, M.Nomura and M.Harada, "Kinetics of Microemulsion Polymerization of Styrene", Coll. Surf. A: Physicochem. Eng., 153, 23-30 (1999)

2.カロリーメーターによる乳化重合反応速度の解析

 乳化重合反応の機構を定量的に明らかにするには、重合反応の速度を定量的に正確に測定することが必要です。カロリーメーターは、重合反応によって生じる反応熱を測定することにより反応速度を求める装置であり、これを用いれば、重量法を用いた反応率の測定値から反応速度を求める従来の方法に比べてより良い精度で反応速度を求めることができます。現在、カロリーメーターの測定精度を上げるべく、カロリーメーターを改良しているところです。

カロリーメーターによる実験風景


<研究テーマ>

  1. カロリーメーターによる乳化重合機構の研究

<参考論文、学会発表>

  1. 芦沢伸夫, 藤田和美, 鈴木 清, 埜村 守, "温度制御性のよい反応装置による反応熱計測装置の開発-乳化重合反応への適用例-", 第10回高分子ミクロスフェア討論会講演要旨集, 65B, 179-182 (1998.11)

3.複雑な重合反応のモデル化とシミュレーション

 分岐や架橋といった複雑な構造を有した高分子を対象として、分子設計・構造制御を行うための基礎となる反応と反応操作に対する数学モデルの開発・研究を行っています。従来の取扱いでは、高分子特性の平均値のみを評価対象とすることが多かったのですが、我々は、分布、ゆらぎ、高次構造なども含めた高度な構造制御を通じて、さまざまな高分子を思いのままにつくりだすことを支援する計算機シミュレーション法を開発することをめざしています。現在のテーマは、ビニル/ジビニルモノマーの共重合反応、乳化重合における架橋高分子の生成過程、マクロモノマーとの共重合反応、重合度依存性を有した重合反応のシミュレーション解析、非線状高分子のGPC溶出曲線のシミュレーションなどを検討しています。


分岐高分子が溶媒中でとる形


<研究テーマ>

  1. 異種高分子鎖間の架橋におけるゲル化点以降の挙動
  2. サイズ排除クロマトグラフィーによる非線状高分子の分子量分布測定に関するシミュレーション解析
  3. ランダム・ウォークとフラクタルに関する研究
  4. 多官能性連鎖移動剤を用いたラジカル重合反応の解析
<参考論文、学会発表>
  1. H.Tobita and M.Nomura, "Molecular Weight Distribution in Nonlinear Emulsion Polymerization", Coll. Surf. A: Physicochem. Eng., 153, 119-122 (1999)
  2. H.Tobita, "Molecular Weight Distribution of Graft Copolymers Prepared from Macromonomers", Polymer, 40, 3565-3573 (1999)
  3. H.Tobita, "Comb-Branched Polymer Formation during Copolymerization with Macromonomer", Polym. React. Eng., 7, 577-605 (1999)
  4. H.Tobita, T.Mima, A.Okada, J.Mori and T.Tanabe, "Molecular Weight Distribution Formed during Free-Radical Polymerization in the Presence of Polyfunctional Chain Transfer Agents", J. Polym. Sci., Polym. Phys., 37, 1267-1275 (1999)
  5. H.Tobita, "Size Exclusion Chromatography of Branched Polymers: Star and Comb Polymers", Macromol. Theory Simul., 8, 513-519 (1999)

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