有機化学研究室
研究室メンバー(平成24年4月現在)
徳永雄次 教授,川ア常臣 准教授 | |
博士前期課程8名、学部4年生8名 |
研究内容
- ロタキサンの合成とその機能化
- 医学・薬学的な応用を目指した有機分子の設計とその合成
- 同位体不斉およびクリプトキラル化合物の高感度不斉認識
- 不斉自己触媒反応の開発
ロタキサンの合成とその機能化
ロタキサンは、環状の化合物に軸状の化合物が貫通し、軸の両末端に嵩高い置換基が存在することで、環が軸から抜けなくなった化合物であります。そのため、環が軸をスライドできるため、通常の分子にはない性質を示すことがあります。
本研究室では、外的な刺激(pH、光、熱など)によって環が軸とどまる位置を可逆的にコントロールできる分子スイッチの合成を達成しています。このスイッチは、数ナノメーターの大きさであるため、例えば、1)コンピュータ部品に用いることができれば超軽量・超小型で高性能なコンピュータが実現可能、2)体内での使用が可能であり細胞表面に固定化できれば生理活性物質の運搬が可能、など、夢のある分子機械となり得ます。新しい分子機械の設計と合成、またその利用について研究しています。
医学・薬学的な応用を目指した有機分子の設計とその合成
体の中のたんぱく質やDNAなどは有機化合物であり、また殆どの薬や体の中にある重要な生理活性物質(ホルモン、神経伝達物質)も有機化合物であります。例えば、あるホルモンが関係する病気にかかっている人がいた場合、そのホルモンの体内での合成が普通の人に比べ少し機能が劣っているのか、それともホルモンを感知する部分(受容体)が少ないのか、など様々な要因が考えられます。しかしながら、機械のように体を開いてそれらをチェックすることは容易にできませんので、外から簡便に調べる方法が取られます。その一つに、CTやMRIなどの断層撮影と画像処理によって診断する方法があります。その場合、特定の部位に関与し、また撮影できるように光ったりエネルギーを出したりする化合物(プローブ)が必要になります(胃の検査でバリウムを飲むように)。そこで、疾病に応じたプローブの設計と合成を行い、新しい診断薬の開発を検討しています。
同位体不斉およびクリプトキラル化合物の高感度不斉認識
L-アミノ酸に代表されるように生体関連化合物は、不斉(キラリティー)を有する。19世紀半ばにパスツールが光学分割を報告して以来、キラリティーは大きな関心を集めてきた。キラリティーに関する新現象を見出すことは、化学のみならず物理・生物・材料科学などの分野の進歩に役立つと考えられ、自然に対する認識を深めることにも繋がる。
不斉増幅を伴う不斉自己触媒反応を基盤とし、従来は不可能とされてきた同位体置換キラル化合物やクリプトキラル化合物のキラリティーによる不斉誘導現象を実現し、これにより従来法を凌駕する超高感度不斉識別法を開発する。
不斉自己触媒反応の開発
生体を構成する化合物の殆どは、像と鏡像の関係にあるD型もしくはL型の不斉分子の一方のみから構成されている。生命が誕生するずっと以前の地球上で何がきっかけとなってL型アミノ酸が生成し不斉増幅してホモキラリティーに至ったのかを解明すること目標として、アミノ酸や糖など生体関連化合物が自己増殖する不斉自己触媒反応の新規開拓を目指す。